福禄ベーカリー: 心がとろける温かい場所

June 26, 2019

憂鬱な雨の中、焼き立てのパンのいい匂いがしめった空気の間から流れてきました。カメラマンと私は寒さに震えていましたが、パンの匂いが私たちが目指す所、「福禄」が近いことを告げていました。

 

 

小さなかわいいドアを開けて店に入った瞬間、このベーカリーの温かい雰囲気で雨のうっとうしさが一気に吹き飛びました。そこには、山のように積まれたパン、キッチンから漂ってくる甘いイーストの香り、そして開店準備のために忙しく行きかうスタッフの元気な挨拶の声がありました。その光景に、心が和んで思わずにっこりしてしまいました。

 

 

APUの生協で売っている焼きたてのパンはここ福禄から来ているのです。ここで福禄の素敵なオーナーと会いました。彼女はお忙しいにもかかわらず、インタビューの時間を作ってくださいました。とても忙しい時間帯なので、オーナーはモーニングサービスのパンの用意をしながらインタビューに答えてくださいました。

 

 

オーナーは焼きたてのパンを並べながら説明してくださいました。「このベーカリーは1999年にできました。今年は20周年です。」

 

 

 

「APUも来年20周年だと思います。」スタッフがパンのトレイを持って急いで通り過ぎたので、壁の方に体を縮めて答えました。

 

「そうです。APUは福禄が開店したちょうど1年後にできたんです。APUが開校したばかりの時、生協は地元のパン屋の納入者を探していたんです。生協の店長以外は、スタッフは地元の人ですから、納入者の候補について聞かれたスタッフが福禄を推薦してくれたんです。」オーナーは顔を上げて陽気に微笑みました。「パンを売ることはAPUからオファーがあったことで、私共が売り込んだわけではないんですよ。」

 

 

 

私は感動せずにはいられませんでした。そして、私が毎日食べるのを楽しみにしているパンがどこから来るのかついに知ることができて、どこか満ち足りた気分になりました。 生協で売っているパンが大好きな学生も多いのですが、そのパンはここから来ていることを知っている学生は多くありません。だから、私たちはみんなが食べているパンを作っている所をもっと多くの学生に紹介したくてここに来たのです。 「素敵な考えですね」とオーナーは言ってくださいました。それから、入ってきたお客さんを迎えるためにそちらに向かいました。実のところ、福禄は、悪天候にもかかわらず開店前から常連のお客さんが行列しているほど既にとても人気があり、私たちが宣伝する必要はありません。

 「でも、学生さんはよく来てくださいます。もちろん、APUの学生さんです。」オーナーはすぐインタビューに戻りました。「このベーカリーはパンを売るだけじゃなくて、パン食べ放題のランチもやっていて、そちらも大変人気があります。」

 

「そのようですね」ベーカリーに隣接するカフェを見て、私は深く頷きました。テーブルはセットされていませんでしたが、カフェの居心地のいい雰囲気が感じられました。「カフェがあるベーカリーはあまり見たことがありません」

 

 

「そうでしょう」オーナーはカウンター越しに手を伸ばして、ジブリの映画から出てきたような素朴なパンを取りました。「福禄のパンの特徴は密度なんです。日本では伝統的に和食で米を食べますが、西洋の影響で徐々にパン食という新しいスタイルが入ってきました。軽くてふわふわしたパンを出す日本の他のベーカリーと違って、福禄は和食の米の代わりになるぐらいみっちり詰まったパンになるようにしているんです。日本人がパンでも米の代わりに満足できる食事がとれるように。」

オーナーがパンを持ち上げたり下げたりするのを見ただけでパンの重みが感じられました。

 

 

 

「それでカフェを始めたのですね?」カフェの方を指して言いました。「ごはんではなく、パンでちゃんとした食事をした気分になれるように?」

 

「ある意味、パンは食事の王様なんですよね。スープ、サラダ、グラタンもお出ししていますけど、パンが舞台のスターであってほしいと思っています」

 

 

「私もそう思います」私はカフェのことをもっと聞こうと思いましたが、カフェ中に置いてあるパンがいっぱい詰まった黄色のトレイについて聞かずにはいられませんでした。「ところで、店に入ってきた時からずっと何だろうと思っていたんですけど、あのトレイは何のためにあるんですか」

 

 


「ああ、これですか」オーナーは私が質問すると、トレイの中のパンを手際よく並べ始めました。「福禄はベーカリーだけじゃなくて、生協などでも売っています。他の場所にもパンを配達するんです。」

 

 

「他の学校にも?」

 

「学校、幼稚園、病院、会社。決まったルートを走る販売トラックもあるんですよ。わざわざお店に来なくても、たくさんの人にパンが行きわたるように。」

 

「だからパンがたくさんある」店はまだ開店していないのに、私たちが来た時、スタッフの皆さんがなぜそんなに忙しそうにしていたのか今になってわかりました。「こんなにたくさんのパンを作るために何時にお仕事を始められるのですか。」

 

「パンを作る担当者は2時半から」事もなげにオーナーは答えましたが、私は驚きを隠せませんでした。

 

 

「APUの学生の大半はまだ起きている時間だと思います」

 

オーナーは笑って時計を見てから急いでカウンターに戻りました。

 

「ごめんなさい。すぐに配達の手伝いをしないといけないので」

 

「そうですね。お忙しいところ、インタビューに応じていただきありがとうございました」私たちはオーナーに丁寧にお礼を言いつつも、出発する前にもう一つ聞きたいことがありました。

 

 

「随分いろいろな種類のパンがありますが、初めて来店した人にどのパンがおすすめですか」

 

オーナーは答える前にちょっと考えて、

「パンはいろいろな種類があるし、人の好みは様々です。おすすめなのは、あなたが個人的に一番好きなパンです」いたずらっぽく笑って、配達に向かいました。

 

 

ベーカリーの心落ち着く匂いに浸り、オーナーの言葉を聞いているうちに、雨は小降りになりました。なぜか、この小さなベーカリーにいるとくつろいだ気分になります。私たちはもうしばらくベーカリーの中を回って、写真を撮って、スタッフにお礼を言ってこの居心地のいいベーカリーを後にしました。スタッフは私たちが入ってきた時と同じ温かい笑顔で見送ってくださいました。感激したのはお土産にパンをいただいたことです。このお土産のパンとベーカリーで過ごした時間のおかげで、憂鬱な雨は癒しの雨に変わりました。

 

 

協力・撮影 VAN Nguyen Hong An

 

 

 

 

 

 

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