漁業女性と海洋環境の研究-APU生による多国間の比較研究

セミの声が鳴り響く昨夏、にぎやかな小教室では、漁業関連のキーワードがホワイトボードを埋め尽くしていました。ここでは山下博美教授の指導のもと、4名の学生が漁業の意思決定に関する研究を行われていました。その女子チームは日本、フィリピン、インドネシア、アメリカで約1年間研究を続けいましたが、今回はメンバー4名のうち3名の学生にプロジェクトについて話を聞くことができました。

「最初は、私たちの先生がナショナルジオグラフィー早期キャリア助成金に応募することを提案しました」とある学生が話に加わりました。ナショナルジオグラフィー助成金とは、さまざまな種類の研究のために学生に提供される助成金のことです。結果的には助成金を獲得できませんでしたが、彼女たちにとって、現地調査のテーマを形成した過程を学ぶことは興味深いものでした。

「私たちは実際に思いついたアイデアすべてをポスターに書き出しました。アイデアはたくさんありましたが、よく出てきた主なキーワードが 『湿地』と 『女性の漁師』 でした。」と女子学生の一人が話しました。ブレインストーミングが終わる頃には、全員が漁業地区の意思決定や、女性がその決定にどの程度関与しているかについても関心を持っていることが明らかになりました。

インドネシアから来た当時8セメスター生のIsabella Italiaさんは、インドネシアでの彼女の研究を紹介することから話し始めました。彼女は、インドネシア政府は17の人工島を建設するつもりであること、そしてこれらの島の建設に関して政府が漁業者と協議したかどうかを知りたかったと説明しました。この人工島は漁場をふさぐことになり、漁業者の生活に大きな影響を与える可能性があります。漁業者はこれらの島を迂回して自分たちの漁場にたどり着かなければならず、そのために距離が長くなり、燃料も倍になりました。結果としてより多くの費用がかさむことになります。

一方、7セメスター生で日本人である川野愛莉さんは、三重県で研究を行うことを決めました。彼女は、「私は三重県の女性ダイバーである海女さんと彼女たちの活動に注目しました。海女さんとは、志摩半島周辺の海でアワビを獲るフリーダイバーの女性(「フリー」とは、道具を使わずに潜ること)のことです。」と話し、主な問題として、「今年から海草が不足していて、それが海の砂漠化を引き起こしています。アワビはこんな状態では生きていけません。アワビは高価で、海女さんの主な収入源なのですが、捕獲が難しくなっています。」と説明しました。

最後に、8セメスター生でフィリピン人のマヤ・アガナさんがフィリピンのルソン島のボリナオで現地調査を行いました。ルソン島には、サンゴ礁や様々な種類のマングローブが豊富にあります。マヤさんは、「マングローブの個体数が減少したため、1990年代にはフィリピン大学と漁業者団体が、これに対応するために一部のバランガイ(漁村)で沿岸資源管理を開始しました。」と詳しく説明しました。加えて、「これまでマングローブが減少した原因は、漁業者がマングローブは邪魔で役に立たないと判断して伐採したためです。実のところ、マングローブの重要性に気付いた女性の漁師たちが、マングローブを守るための非公式組織を立ち上げたのです。嵐がマングローブをなぎ倒すたびに、彼女たちはそこへ出向き、新しいマングローブを植えました。」と話しました。彼女たちの組織は、その努力が認められ、正式な組織となり、大学との沿岸管理に関して連携を続けています。

興味深いことに、女子学生たちの発見は研究の場所と同じくらい多様なものでした。イタリアさんは、「インドネシアでは女性の漁師たちの役割は目に見えないものです。彼女たちは夫の漁の準備を手伝いますが、自分たちで魚を捕るわけではありません。」と話しました。イタリアさんは約11名にインタビューを行い、人工島の建設決定について、女性の漁師たちが相談を受けたかどうかについて、具体的な回答は得られませんでしたが、インタビューした女性の漁師たちから、実際には相談を受けていないことを察知しました。これは三重県で起きたこととそれほど違いません。

インドネシアと同様に、三重県の漁業組合が補助金を申請した時、海女さんは除外されました。愛莉さんは「漁業組合は、海女団体に相談せずに補助金を申請しました。補助金は、地方自治体から使用方法に関する指示とともに交付されました。海女さんは海草の保護に必要な手順に精通しているにもかかわらず、漁業組合は彼女たちに相談することなくプロジェクトを始めたのです。」と説明しました。

フィリピンのバランガイでは、その結果は多少異なっていました。マヤさんは約16名の女性の漁師にインタビューしました。彼女が行ったグループインタビューでは、女性たちがマングローブの再生について関与しているこが明らかになりましたが、データシートを比較すると矛盾点が露わになりました。ボリナオでは女性の参加率は比較的高いとはいえ、文化的、構造的、社会的な障壁が依然として存在しています。

1年間の研究を振り返ってみると、女子学生全員がお互いに協力したことに満足していました。マヤさんは、「いつも友達と話し合っているような感じで、一番良かったことは、私たちがそれぞれ違う国の出身だからこそ、幅広い視野を持ち、それを共有してじっくり検討できたことです。」と話しました。彼女たちの研究は、ある意味、より多くの女性が漁業地区の意思決定に関与する必要があることを証明したこともあり、彼女たちの努力は実に素晴らしいものです。

彼女たちの論文が楽しみですね!

© 2017 Ritsumikan Asia Pacific University